大判例

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札幌高等裁判所 昭和28年(う)659号 判決

原判決は、関税法第七十六条第一項にいう「貨物」には、支払手段として携帯した紙幣、日本銀行券等は含まないと解するのが相当であるとし、本件公訴事実中関税法違反の点即ち被告人が税関の輸入免許を受けないで原判示第二の支払手段を本邦内に輸入した事実は、罪とならないものであるというのであるが、関税法第一条によれば「輸入貨物ニハ関税定率法ニ依リ関税ヲ課ス」と定めるとともに、関税定率法第一条において「外国ヨリ輸入スル物品ニハ別表ニ依リ関税ヲ課ス」と定め、しかして同法別表輸入税表一一四〇には「紙幣、銀行券」等を掲げて無税と規定しているから、紙幣、銀行券等が関税法にいわゆる「貨物」に該当することは論なきところであるというべく、従つてこれらの支払手段を輸入せんとする者は、関税法第三十一条により「税関ニ申告シ貨物ノ検査ヲ経テ其ノ免許ヲ受」けること、即ち所謂通関手続を経なければならないものと解すべきである。更に関税法と外国為替及び外国貿易管理法(以下管理法と略称する)との関係について案ずるに、支払手段を輸入せんとする者は管理法によつて大蔵大臣の許可を必要とすると規定せられている以上、税関の免許は必要ではないと一応考えられないではない。しかし関税法第三十一条の三は、他の法令により輸入に関し許可を要する旨の規定ある貨物については通関手続に際しその許可を受けたことを税関に証明すべき旨規定し、また外国為替管理令第二十条は、支払手段を輸入せんとする者はその輸入が許可せられ或は認められたることについて税関の確認を受けなければならない旨規定しているところから見れば、輸入につき許可を要する貨物については通関手続に際してその貨物を検査して許可を受けてるか否かをたしかめ、以つて、無許可貨物の輸入を現実に防止するのが関税法第三十一条の目的(関税の徴収が主たる目的ではあるが)とするところと言わねばならない。かくの如く管理法と関税法とはそれぞれの目的を有するから、許可も免許もなくして支払手段を輸入する行為については管理法及び関税法を適用し、刑法第五十四条第一項前段によるべきものと解するのが正当である。しからば、原判決が被告人の前記所為が関税法に違反せざるものであるというのは法令の適用を誤つたものであるというべく、しかして関税法違反の罪と管理法違反の罪と、その法定刑を比するに、前者の罪の刑が重いから、刑法第五十四条第一項前段の適用により、関税法違反の罪の刑を以て処断すべかりしものなのであつて、右法令適用の誤は判決に影響を及ぼすことが明らかである。論旨は理由がある。

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